青春ストーリー
「じゃあ、どうすれば人見知りをなおせるのさ…。」

やはり下を向いたまま、呟くように言う。涙は止まったようだ。

「それは自分で考えるしかないよ。でも、確かに人見知りはしょうがないし、亜弥さんが言ってた通り、今宮君や早坂君と一緒にいるから、何かしらトラブル起こすと、いじめの的になりやすいと思う。そういうときは第三者の助けが必要だよ。だから…」

私はそこで一旦息継ぎをして、そして、言った。

「だから、友達になろう、亜弥さん。人見知りなら、強引にでも引っ張ってくれる友達が必要でしょ?」

亜弥さんはやっと顔を上げて、私の顔を見る。そして、言った。

「私のこと、嫌いだからあんなこと言ったんじゃないの?」

さっきよりも少しだけ、怒っているような声だった。
自分を批判するようなことを言っておいて、何で友達になろうなんて言うのか、意味が分からない。もしかしたらからかっているのではないのか。そう思われるのは覚悟の上だった。

「私が伝えなかったのは亜弥さんが嫌いってことじゃない。今まで友達を作るチャンスはたくさん有ったし、今からでも作れるってことを伝えたかったんだよ。」

亜弥さんは驚いて目を開き、そして笑った。とても可愛らしい笑顔で。

「友達なら、さん付けはなしだよ。」
「うーん、じゃあ、いっそのこと「亜弥っち」って言うのは?」
「やめてよ!なんか気持ち悪い。そしたら九瀬さんって言われる方がましだよ。」
「名字九瀬なんだね。」
「…私、君の名前知らないかも。」
「そういえばそうだね。」

予鈴が鳴って、私達は階段を下りた。他愛ない話をして、肩を並べながら……。
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