溺愛伯爵さまが離してくれません!
お昼に散歩と称して向かった先は、海が遠くまで見れる小高い丘。
お屋敷の裏から、歩いて20分程の場所にありました。
そこから見える海は、遠くても水面が太陽に反射して、宝石のようにキラキラと輝いています。

「綺麗・・・」

「いい眺めでしょう?ここはね、私と夫の定番のデートコースだったの。いつもこの海を眺めながら色々と語り合ったものだわ。・・・いい思い出よ」

奥様は海を見つめながら、切なそうな表情を浮かべていました。

愛する人と同じ景色を見つめて、同じ時間を過ごす。

とても羨ましい。

私も伯爵さまと同じように、貴族として生まれたなら。
同じ時間を、伯爵さまと過ごす事が出来たでしょうか?

「私ね」

「はい」

「実は、あなたと同じ、庶民の出なのよ」

ぽつりとそう、奥様は呟きます。
思いがけぬ言葉に、目を見開き奥様を見たまま動けなくなってしまいました。

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