溺愛伯爵さまが離してくれません!
街の中心から出ようとした時、向かいから誰かが歩いて来るのが見えました。
もやっとした影だけがこちらの方へと向かってきます。

ぶつからない様に少し距離を取り、小走りですれ違った時でした。

それは魔法のように、身体中に駆け巡ります。


・・・・あ。


ドクン、と胸が大きく鳴り、身体を揺らします。


――それは、雨に濡れた地面の匂いに混じって香る、いつもかぎ慣れていたあの香り。

私の心の中でいつも想う人の香り。

この香りは・・・。

――嘘。


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