溺愛伯爵さまが離してくれません!
ついにガルムの口からその言葉が出たのか、と僕は厳しい表情に変わる。
ずっとガルムはその言葉を言わないようにしていた。それはよく分かっていた。
でも、この街でも何も得られないのであれば・・・。

不安と恐怖が一気に身体中を支配して、震えが止まらなくなった。

嫌だ、考えたくない。
そんな事になったら、僕はこれからどうしたらいいんだ。
その時、僕は・・・。

「カイル様。今は余計な事を考えずに、探す事に集中しましょう」

僕の異変に気が付いたのか、ガルムはそう牽制した。
ガルムの低い声にハッと我に返り、そして呼吸を正す。

「・・・分かってる」

今はそんな事を考えるのはよそう。
まだ、決まったわけじゃない。

リーナはいるんだ。必ず生きている。


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