溺愛伯爵さまが離してくれません!
ルオンの街に着いた。

雨が激しく降っていて、街の中は閑散としている。
一軒一軒回って話を聞くが、それらしい有力な情報は得られない。

「このくらいの女性なのですが、見かけませんでしたか?」

「さあ、どうだろうねぇ。この街は船着き場があるから人の入れ替わりも激しくて、ちゃんと覚えている人なんて少ないんじゃないかい?」

露店の店主に話を聞くも、返される言葉は欲しいものではなかった。
その言葉を聞くたびに、小さなため息が漏れる。

激しい雨のせいで、傘を差しているのに服は濡れて汚れていた。

でもそんな事を気にしている場合じゃない。
めげずに手当たり次第声を掛けた。
だが結局、リーナの情報は何も得られなかった。

途方にくれながらも街中を歩き回り、やがて、街の外れに建っていた一軒の古ぼけた屋敷に着く。
あまり大きくはないけれど、この街でこのくらいの大きい屋敷は早々ない。
豪商の屋敷なのだろうか?

ここが最後。
・・・もうこの家しか残っていない。
何か些細な事でもいい、リーナの手掛かりが欲しい。


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