溺愛伯爵さまが離してくれません!
「すみません、誰かいませんか?」

扉を叩きながら中の主人に呼びかけると、少し間を置いて扉が引かれた。

「どうなさったの?」

そう言って出てきたのは、40代くらいの女性。
派手ではないけれど、上品で動きやすそうなドレスを身に纏っている。
僕と同じ貴族のように見える。

「・・・あなたは?」

怪訝そうな顔で僕を見つめ、そう聞いてきたので、僕は慌てて自分の名を言う。
決して怪しいものではないと思ってもらうために。

「僕・・、いえ、私はアルフォンソ伯爵家のカイルと申します。実は人を捜しているのです。20代半ばの女性で、目鼻立ちのハッキリとした、少しウェーブのかかった栗毛の女性を見かけませんでしたでしょうか」

「女性・・・ねぇ」

目の前の婦人は、考え込むように目線を横にずらした。
さらに詳しくリーナの特徴を話す。

「背はこのくらいで、少し痩せていて、いつもは髪を一つに結んで・・・」

「その女性の方と何かあったの?」

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