溺愛伯爵さまが離してくれません!
僕の話を遮ってそう言うと、婦人はじっと僕の顔を見つめた。
理由を言わないつもりでいたのだけど、なぜだかこの婦人には言わなければいけないような気がして、僕は正直に話す。

「私の侍女だったのです。でも、私がふがいないばかりに突然いなくなってしまって。私は彼女を愛していました。けれど、親との約束でそれを伝える事がどうしても出来なくて。・・・こんな事ならもっと早くに告げるべきだったと、もっと大事にしてやるべきだったと後悔しているんです。だから、どうしても会いたくて、ずっと探しているんです」

言葉でそう想いを出すと、胸が締め付けられるように苦しくなる。
思わず胸の部分の布を握った。

「・・・そんな辛い事が・・・。でも、ごめんなさい。私はそのような女性を見ていないの」

その言葉を聞いた瞬間に、身体中から力が抜けそうになった。

「・・・そう、・・・ですか」

この街で一番最後の希望だったのに。
絶望感が一気に僕を襲う。

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