溺愛伯爵さまが離してくれません!
・・・明るかったお屋敷の中は、薄暗くなっていて。
豪華なシャンデリアは落ちて粉々に割れています。

そしてあんなに綺麗だった部屋も、家具も、食器も。
全て埃をかぶり、汚れていたのです。

もう何十年も誰も住んでいないような、荒廃したお屋敷の中に変わっていたのでした。

「そんな・・・・」

その光景に、私はその場で座り込んでしまいます。

こんな事ってある?
だって私は今日まで、ここで暮らしていたのに。

「幻を見ていたの・・・?」

この3か月間、私は一体どうやって生きてきたのでしょうか。
幻の中で、奥様と生活をしてきた?
夢のような仮想の中で、私は生きていた?

・・・でも、確実にこの身体に、この心の中にハッキリと刻まれている。

奥様と笑い合った事。泣き合った事。
・・・そして語り合った事。

それは忘れたくても、忘れる事が出来ない事実。

――私は確かに、ここで奥様と一緒に生活していたんです。
それなのに、なぜ・・・。


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