溺愛伯爵さまが離してくれません！

「やっほ、姉ちゃん」

「あら、リュリ。来てたの？」


ある日。
弟のリュリが花を届けるついでに、私の部屋へと訪れました。

実は私がこの屋敷からいなくなった事を、家族には話していません。

伯爵さまは、私が戻って来たのだからそれでいい、と。
家族に余計な心配は掛けなくていい、とそう仰ったのです。

目の前のリュリは屈託のない笑顔で、私を見ていました。

私がここに戻らなければ、この笑顔がなくなって、きっと家族はずっと悲しみに暮れてしまっていたでしょう。
そう考えた時、私のやったことがどれだけ大きな間違いであったかを痛感させられます。
本当に伯爵さまには、何回謝っても謝り切れません。

「あれ？カイルは？」

「伯爵さまは外出中よ。って、リュリ、伯爵さまの事を呼び捨てにして、失礼よ」

少し怒った口調でそう話す私に、リュリは驚いた表情を見せながら、こう返しました。

「ええ？姉ちゃん知らなかったのか。俺達結構昔から仲良くてずっと呼び捨てで呼び合ってたんだぜ？」

「・・・は？」