溺愛伯爵さまが離してくれません!
心無い事を言われる事もなく、目に見えた嫌がらせをされることもなく、少しずつ私達の気持ちにも余裕が増えていき、日々を穏やかに過ごす事が出来るようになっていった。

休みの日はあの丘で、昼食を摂りながら、たわいのない話をする。
どんなに彼が忙しくても、私は起きて帰りを待ち、そして必ず彼と会話をする。
ベッドで横たわりながら彼の髪を撫で、そして彼は私に愛を囁く。
その愛に応えるように、私は彼にくちづけを落とす。

何気ないその日常がとても幸せだった。
こんな日がずっと続けばいいと、ずっと続くものだと、そう思っていた。


けれどこの街に移り住んで1年が経った時、私の体調が変化する。

何を食べても美味しくない。
それどころか食べるとその場で吐いてしまう。
やがて何も食べられなくなり、それでも吐き気は止まらず、ついに赤い液体を吐き出すようになった。


< 160 / 166 >

この作品をシェア

pagetop