溺愛伯爵さまが離してくれません!
「・・・ン・・・エレン」

―――私の名を呼ぶ声がする。
とても愛しい、聞きなれたあの声。

重い瞼をうっすらと開け、横目で見るとレガートが私の目線に合わせ、しゃがんで私の骨だけの手を取って見ている。

その顔はひどく歪んでいた。
とても悲しそうな、苦しそうなそんな表情だ。

「・・・エレン、聞こえるかい?」

その言葉に目を少しだけ動かす。
何か話そうとしても、声が出ない。
どうやって声を出すのかすら忘れてしまったように、口からは浅い息しか出る事はなかった。


「・・・愛しているよ、エレン。君と一緒になれてとても幸せだ。今まで辛い思いをさせてすまなかった。だけど私は君と一緒にいれたから踏ん張れたんだ。だから・・・」

そこから先の言葉が、聞き取れない。
頭の中が真っ白になって、映るものが霞み始める。

けれど不思議な事に、あんなに苦しくて辛いはずの身体がだんだんと楽になっていく。
ふわふわと浮かぶように軽く、とても気持ちが良い。


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