溺愛伯爵さまが離してくれません!
・・・死が迫っている。

けれど、不思議と不安はなかった。
ただ、残されるレガートが心配。
それだけだった。

私は最後の力を振り絞って、口を動かす。

声にならない声。
息に混じって微かに雑音のような声が出るだけだった。

「レ・・ガー・・ト・・・あ・・・い・・して・・る・・・」

伝わった?
ねえ、この言葉、貴方に伝わったかしら?

レガートが私を抱きかかえて泣きながら、何かを叫んでいる。
彼の体温がしっかりと身体に染みわたって、とても温かい。

何も聞こえない、何も見えない。
だけど、私は今とても幸せなものに包まれていた。


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