溺愛伯爵さまが離してくれません!
私の名は、リーナ・サイダル。
アルフォンソ伯爵さまに仕える侍女でございます。

元々私の家は花屋を営む、ただの庶民でございました。
アルフォンソ家は大事なお得意様のひとつで、定期的に屋敷の花を届けておりました。
アルフォンソ家があったからこそ、私達家族は生きながらえていた、と言っても過言ではありません。


そう、私が15の時です。

前のアルフォンソ伯爵様であるギルバート様が、私を息子のカイル様の侍女に、とのお話しを頂きまして。
次期当主付きの侍女になれるなんて早々ない事でしたから、家族は大喜び。
あまり乗り気ではない私をよそに、勝手に話を進めてしまったのです。

で、今に至る、と。

私が来たばかりの時は、カイル様は11歳。
その時はとても純粋で素直な、可愛らしい少年でした。

ところが、年を重ねるごとに培っていく美貌と女たらし。
今では「夜会の魔術師」なんて不名誉なあだ名まで付けられて・・・。

由緒正しき、このアルフォンソ家をこの方で落としてはならない、と頑張る毎日なのですが・・・。

「上手く行かないわね・・・本当に・・・」

廊下で大きくため息を付くと、そう呟いてしまいました。
< 3 / 166 >

この作品をシェア

pagetop