溺愛伯爵さまが離してくれません!
ああ、やはり伯爵さまは貴族なのだ、と。
細かいところまで、しっかりと貴族としての教養が行き届いているのだ、と改めて思い知らされました。

私とは大違い。
いつもは大きな口でめいっぱいまで頬張って、食器の音を響かせて。
ルールも、マナーも何もあったもんじゃない。

伯爵さまの住む世界は、ちゃんとした教養のある方ばかりがいる場所。
こんな世界に私がどう頑張ったって、足掻いたって、入り込める訳ないじゃない。
心の中で想うことすら、なんだか申し訳なくなってしまう。

かちゃり、と手に持っていたスプーンをお皿の上に置きました。
私が食べている姿を伯爵さまには見られたくなかったのです。

きっと幻滅してしまう。
マナーも何もない、下品な女だって思われてしまう。

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