溺愛伯爵さまが離してくれません!
「リーナ?大丈夫かい?」

扉の向こうから、伯爵さまの声が聞こえます。
ハッと我に返り、服の裾で涙を拭うと、扉を開けることなく応えました。

「だ、大丈夫です。ご心配なく。今日は一日部屋でゆっくり過ごしますから」

「部屋に入ってもいいか?」

「だ、ダメです!寝るために着替えている途中ですから入らないでくださいっ!!」

咄嗟の嘘。

それでも伯爵さまはそれを信じたのか、「分かった、じゃあ今日はゆっくりお休み」、とそう言ったのでした。
扉の向こうの気配が消えホッと胸をなで下ろし、また布団に顔を埋めます。


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