溺愛伯爵さまが離してくれません!
「カイル様、大丈夫ですか?」

クレアは濡れたタオルを手渡してくれる。それを受け取り、顔の上に置いた。

・・・冷たい。
これは、夢ではないんだ。

どうして、僕の前から消えた?
僕の何がいけなかったんだ。
なぜ・・・。

どうして、となぜ、ばかりが頭の中で交錯する。
そんなもの、今考えてもどうしようもないのに。
ここにもう、リーナはいないのだから。

目のあたりがじんわりと生暖かくなった。
情けない。男のくせに、涙なんか。

クレアに見せないよう、置いたタオルを手で顔に押し付け、涙を拭った。

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