溺愛伯爵さまが離してくれません！

「どうなさったの？」

その時、後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには日傘を差した中年の女性が立っていました。

「何かお困りのようね？お仕事でも探していたの？」

そう言ってその女性はニコリと笑みを浮かべます。

私の母と同じくらいの歳の人。
でも、とても美しい女性でした。

シックで上品なグレーのベルベットのドレスを着こなし、艶やかな髪を後ろで綺麗に纏め、そして、左の薬指には少し大きめの宝石が光る指輪を付けて、一見すると貴族のご婦人のように見受けられます。

けれど、貴族の女性ならば街を一人では出歩かないはず。
この方は一体・・・？