溺愛伯爵さまが離してくれません!
エレンさんの屋敷は街の郊外にあり、屋敷の周りは自然が溢れ、とてものどかな場所にありました。
伯爵さまの家よりはひとまわり以上小さく、古いお屋敷。
でも、庭は手入れされてとても綺麗。

「さ、入って。今お茶を持ってくるわ」

私を応接室のような部屋に案内すると、エレンさんは部屋からいなくなります。

エレンさん自身でお茶を入れに行ったの?
決して大きなお屋敷ではないけれど、でも、十分すぎるくらい広いのに・・・。
ここにはエレンさんしかいないのかしら・・・。

部屋を見渡しても、椅子とテーブル、そしてサイドボードくらいで他に物は見当たりません。
必要なもの以外は何もない、殺風景な部屋。
なんだか寂しさを感じます。

「お待たせ、どうぞ」

カップを持ったエレンさんが部屋に戻り、湯気の立ったカップをテーブルに置くと、私の向かいに座りました。

「冷めないうちに飲んで?」

「ありがとうございます・・・いただきます」

エレンさんに促され、カップを手に取りひと口飲みます。
爽やかでほのかに甘い、とても美味しい紅茶でした。

< 99 / 166 >

この作品をシェア

pagetop