魔術師の瞳




「あざみさん、遷宮家の序列二位おめでとう!」


「ありがとう。兄の活躍ですから、私もとても嬉しいです。」


そんな穏やかで平穏な昼食時間の後に教室に戻る。クラスはランクごとに分けられるのではなく、ランダムに分けられている。AからPまで様々な生徒が共存する学級というのは社会の縮図のようだ。


「次の自習は何をするの?あざみさん。」


「そうですね、まだ悩んでます。」


友人とそんな会話をしていると閉まっていた教室のドアが大きな音をたてて急に開いた。ずかずかと入ってくるのは近衛刀李だ。同じクラスなのだが基本ふらふらと自由行動をする刀李は教室に来ること事態珍しい。


「K、近衛刀李。A、遷宮あざみに決闘を挑む。」


「やめなよ刀李!聖羅さんに怒られるよ!」


小柄でボブヘアーの少女、先程の一ノ瀬聖羅の取り巻きの一人の姫島美花(ヒメジマ ミカ)が必死に止めようとするがそれを振り払って近衛はあざみのすぐそばまで来た。


「もちろん受けるだろ。遷宮」


「自習ですし、良いですよ。」


あざみの優雅な態度に舌打ちした後に二人は外野というなのクラスメイトをぞろぞろ引き連れグラウンドへと向かう。


「あざみさん、お隣のクラスから式家の方が来ております。」


友人の一人が駆け寄ってきてそう伝えると共に、ざわつく人混みの中に生まれた一筋の道を腰まである黒髪をポニーテールにした美青年が歩いてくる。
女性と見間違えそうな程に端整な顔立ちで、あざみと同じ紫色の瞳。
式家頭主、式 蒼蓮(シキ ソウレン)。式家は日本古来の呪術を使う、日本で最も格式高い魔術師の一門だ。
この蒼蓮という青年は最年少で頭主になっただけでなく永きに渡り続いていた西洋魔術と日本呪術の対立を軟化させ、御三家の一角遷宮家を配下に入れた。現在の日本で最も力のある名家だ。
式家と実力で張り合えるのは御三家序列第一の名家のみと言われるほどに、式家の力は強大であった。


「あざみ、俺がその勝負を受ける。お前は理事長室へ行け。」



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