魔術師の瞳
理事長室を出てそのままグラウンドへ向かう。
歓声がグラウンドへ向かうアスファルトで舗装された小道まで聞こえてくるほどに盛り上がっている。
「どうしたんだ、近衛次期頭主。こんなものか?」
白銀の刀身が日光を返す、刃長75cmはありそうな鎬造りの美しい日本刀の背を肩にあて立っている蒼蓮。その格好は一切乱れておらず、ブレザーすら脱いでいない。
その数十m先では膝をついて肩を激しく上下させる刀李。身体には幾本もの切り傷。深いものも浅いものもあるが、総括して言えることは重傷一歩手前ということだ。
「くそっ!」
強く地面を叩いた刀李、その側には折れた槍がある。
魔術戦には二種類ある。武具を使用し魔術で自身をサポートするもの、武具を用いず魔術でのみ戦うもの。今回は前者らしい。
「お帰りなさい遷宮さん。見ての通り式様が圧勝ですよ。」
友人にそう言われやっと柔らかな笑顔に戻ったあざみ。
彼女の気配を察知してか蒼蓮が振り向いた。