魔術師の瞳
暫しの沈黙、そして
「・・・式家が何だって言うのよ。私と戦いなさい式蒼蓮。」
怒りをありありと示す一ノ瀬は取り巻きに近衛を任せて、どこからともなく日本刀を取り出した。
蒼蓮の扱うものよりは若干小さいが随分と豪奢な拵えだ。
「いいだろう。」
そう言って鞘から刀を抜こうとした蒼蓮をあざみが止める。それで何かを察したのか蒼蓮はグラウンドから階段で小道へと上がる。どうやらそこで観戦するようだ。
「どこに行くんですか。戻りな────」
「止めなさい一ノ瀬聖羅さん。無礼ですよ。」
「序列二位になったからって調子にのらないで。それとも、あなたが私の相手を?」
「良いですか、これは警告です。一ノ瀬さん。刀を納めなさい。」
あざみがそういった瞬間、聖羅の姿が消えた。
脚に力を込め、瞳は青く光を放つ。目で捉えればあざみの勝利、一度で決着がつくと互いに分かっていた。
シュン、と風を切る音が後ろからあざみは素早く振り返るが刀身はすぐそこ。
間に合うか間に合わないかは賭けだ。
「曲がれ」
刀身がぐにゃりと力をなくしたかのように湾曲したが遅い。切れ味を失おうと鈍器で殴られるようなものだ。死にはしないがダメージは必須。
奥歯を噛み締めたあざみだが、衝撃はいくら待っても来なかった。