魔術師の瞳




「あ、あの?きょ、京極さん?京極さん・・・?京極!?」


京極、そう京極家こそが御三家の序列第一位にして式家と同じく日本を代表する名家だ。
その苗字を持つということは、すなわちこの青年。京極冬夜は京極家の人間なのだ。
そこで彼女は思い出す。京極家の次男にして日本最年少で白壁城へ入学し、必要単位を日本で言う中学校教育機関で総て取得した青年の名前を。


「そう、俺が序列第一位の京極家の跡取り。」


首元から顔を離し、あざみを丁寧に地面に降ろした冬夜は柔和な笑みで手を差し出してくる。


「これからよろしく。」


「こちらこそ、よろしくお願い致します。」


驚きでぎこちないものの微笑んで見せたあざみを見て、愛しそうに目を細める。
だが、平穏な時間には終わりが付き物。足音と共に冬夜になにかがぶつかった。


「冬夜!会いたかったわ!」


先程までの殺意や怒りを宇宙の彼方にロケットで飛ばしたのか、と問いたくなる程に態度を変えた聖羅。
冬夜は柔らかく微笑んだまま聖羅を見る。


「一ノ瀬さん。」


まるで随分会えなかった恋人に再開したかのような甘えようの聖羅だったが、冬夜に名字で呼ばれて傷ついたような顔をして顔を上げた。




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