魔術師の瞳




「そうですか。」


随分と冷静な返事に拍子抜けしたらしい燕だが、話を続ける。


「学園内では決闘だと相手を殺していいんだろ?一ノ瀬家の人間とその配下には気を付けろ、だとさ。」


なるほど、御三家の一ノ瀬にはいくつもの分家や従属する家がある。不特定多数の人間の前で言うのは得策ではないだろう。
だが、なぜこんな場所で言うのか。あざみには分からなかった。


「それと、これは私の個人的アドバイスだが。」


そう前置きをした燕は、ため息を吐いた後に


「婚約者ってのは家の為だけに決めるものじゃないぜ。」


ぶっきらぼうな口調でそう言って粉塵が強風に吹かれるように姿を一瞬で消した。
取り残されたあざみは一人、一ノ瀬に注意すると決意すると共にアドバイスに対する困惑を胸に刻んだ。



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