魔術師の瞳
「隣、いいかな?」
「勿論です。」
人二人は座れそうな隙間を開けてあざみは微笑んだ。パーソナルスペースに入れるのにはまだ早いらしい。
「どうぞ。」
そう言って差し出されたのはカフェラテだ。
辛いものよりは甘いものを好む彼女にとって、ミルクと砂糖の組み合わせは好みのど真ん中。ホームランだ。
対人様の教えられた微笑みではなくて、自然に溢れる素の笑顔で受け取ってお礼を言うあざみを見て冬夜はまた穏やかな笑みを口元に刻む。
色々な笑い方をする人だ。なんてあざみは思ったが、心にしまっておく。
「さっきはろくに自己紹介もしないでごめんね。」
「いえ、こちらこそきちんと挨拶もせず、すいません。」
「いや、良いんだよ。」
穏やかな笑い声を溢した冬夜につられて笑い声を溢す。
深い慈しみが湛えられる緑の双眸に紫の瞳が合った。
「仕切り直しといこうか。」