魔術師の瞳





私は今から取るに足らない私の話します。

私は数千年続く西洋魔術師の名家、それも本家本筋に名を列ねる女です。
私に歴史に名を刻むような魔術の才能はございません。血統と、身分という飾りに着られる女です。

母親譲りの濃い紫を帯びた長髪、父親譲りの紫色の瞳。容姿には恵まれておりますが、魔術師にとって容姿はさして気にするものではありません。

使える魔術は数百種、一般の魔術師の家系ならば神童と詠われますが私は名家に名を列ねる者。ごくごく平凡な数でございます。
魔術というのは己の体に流れる脈々と受け継がれている魔術神経に体内で生成される俗に言う魔力を流し使用します。人それぞれ神経の長さや太さ、大きさに差違があります。長く大きく多い魔術神経を持つ者が優位で、短く細く少ない魔術神経を持つ者が無能の烙印を捺されます。
私は幸い両親譲りの立派な魔術神経の保有者で、かなりの期待をこの身に背負って生きております。

私は何の責任や期待も負わない人間が嫌いです。己の才能に自惚れる人間が嫌いです。そして、何よりも私の家 遷宮家を馬鹿にされることが嫌いです。

それ故私の魔術は攻撃的で、多くの人を傷つけてこの日まで行き永らえています。


これが愚かな私です。

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