魔術師の瞳
週に三日は友人と、残りの四日は蒼蓮と昼食を食べる日々が始まったのはいつからだっただろうか。
両家の両親共に認める仲の良い二人で、もしかしたら両親達は結婚を望み引き会わせていたのではないかと思うほどに総てが出来すぎている。
だけど、こうやって傍に座っても嫌ではなくて、むしろ安心感すらあるのが答えなのかもしれない。
「ねぇ蒼蓮様。蒼蓮様は私が好きなんですか?それとも、家の命令ですか?」
呟いた言葉が耳に届くことはなく、すうすうと寝息が聞こえるだけだ。
紫色の瞳を細めて笑うあざみ。その姿はまるで子供を見る母親だ。
「私、蒼蓮様といると何もかも忘れられる気がするんです。」
初恋が胸を焦がしても、蒼蓮をみれば和らいだ。脳裏で響く声も消してくれた。
冬夜といるときは過去の扉を開いて記憶の海に沈んでいくのに。
蒼蓮といると「もし」で溢れた都合の良い未来だけを思い描ける。
それが良いことかは分からない。だが、痛みはない。
決して建設的な関係ではない、謎の相互依存によって成り立つ関係だ。
愛だの恋だのではなくて、もっと心の根元に迫る、コンプレックスを庇い合う関係。
憂いを含み細められる紫の瞳だが、彼女の瞳よりも美しい紫の瞳は一向に開かない。