魔術師の瞳
「蒼蓮様、お身体に障ります。起きてください。」
そう言って肩を叩くと、眉間にシワがよった後に美しい紫の瞳が世界を写す。
欠伸をして、髪を結ぶ紐がないことに気がつき首をかしげる。
普段は威風堂々と王者然とした振る舞いだが寝起きは歳相応のあどけなさだ。
「あざみか。」
「そうですよ。髪紐はこちらに。」
紐を差し出せばそれを受け取って笑う蒼蓮。髪は結ばずに手首に結ぶと立ち上がって伸びをした。
「寮に帰るか。」
「はい。」
微笑んでそう言うと蒼蓮はあざみに手を差し出す。それを掴んで立ち上がると、蒼蓮の後について歩く。
会話はないが、前にいるだけで良い。それだけで満足なのだ。
晴れ渡る青空が彼女の心を代弁していた。