魔術師の瞳
目創螺旋
捻れ
蒼蓮を理事長室に呼び出す放送がかかったことで二人は別れ、一人きりで寮まで歩く。
学校北に広がる森の正反対の場所にあるのが寮だ。二つの場所の中継地点が校舎で、あざみは校舎に近付かないように外壁に沿って歩く。
ふいにほんの僅かな誤差が頭の中に響いた。
ここは違う。違うのだ。
いくら校舎から離れていると言っても普段の学校ではありない静寂、急に薄暗くなり雨を落としそうな空。
どうやら相手の結界に入り込んでしまったようだ。
夜の闇に似た何かが辺り一面に広がり始める。
瞳が青く光を放ち、周囲を見渡すが人はいない。
そう、″人″は。
カタカタと音をたてて迫ってくるのは数十体の壊れたマネキン。一つとして完全体がなく、皆どこかを欠損しているのだ。
「これは、壊せませんね。」
彼女の目は基本万物に作用することができる。
だが、どんな物事にも例外があるように、彼女は人形にだけ手が出せないのだ。その理由は自分でも分からないが、人間やアスファルトすらもねじ曲げ壊すことはできる目でも人形には使えない。
唯一にして最大の切り札は封じられた。生憎武器の持ち合わせもなく、使えるのは純粋に魔術のみだ。
されど、魔術で補強してしまえば華奢な肉体でも刃や銃弾等容易く防げる。
彼女は深く息を吸い込んで、両手を構えた。