魔術師の瞳




口角を上げたあざみ。完全に切り替わった脳は淑やかな少女とかけ離れた獣の登場を示す。


「螺旋」


ゴキゴキゴキッ、と骨の折れる音、肉の曲がるおと。骨が貫いた肉から血が吹き出し、露になった神経から想像し難い理不尽な激痛が伝達される。

螺旋を描くように螺曲がった右腕だったもの。握られているナイフが地に落ちた。ぼたぼたと滴る赤が辺りを染める。

数秒後、やっと状況を理解した腕の主の絶叫が響く。


「馬鹿な人、私は見えるもの総てを壊せるんですよ。」


形を持たなかったら、勝てたのに。
そう呟いたあざみは足元に転がるナイフを手に持ち、艶やかに笑う。
螺曲がった腕は治癒魔術でも完璧になおるかは分からない。
奇襲者がかける魔術で少しずつ少しずつ癒えるのだが、腕をもとに戻すために巻き直さなければいけない。
こき、こき、と数度づつ回る腕は耐え難い激痛をもたらし息も絶え絶えな奇襲者。
その顔を隠すフードに手を掛けたあざみは、一思にフードを捲った。






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