魔術師の瞳
燕があざみを連れてきたのは学園内にある広場であった。
本来ならば授業中のため辺りに人はおらず、静かだ。ベンチに座るように促され渋々座ると、その隣に燕が座る。
「良いか。あんたは強い、だから言うぞ。」
強い決意の称えられた黒い瞳があざみを捉えて離さない。
物々しい雰囲気のなか、言葉を選ぼうとしていた燕だが諦めたように口を開く。
「一ノ瀬聖羅を殺せ。」
「・・・それは、命を狙われているからですか?」
首を横に振る燕。いくら命を狙われているからといって同級生を殺すのは最後の手段だ。
さっきの姫島だって殺すつもりはなかった。狙うからにはリスクを覚悟してきただろうし、あざみはそのリスクを身をもって償わせただけだ。
例え一ノ瀬を殺したとしても遷宮と一ノ瀬の仲が険悪になるだけで、大した支障はきたさないが流石に殺すには決断が早すぎる。
「お前が式の頭主と結婚しようと、京極の人間と結婚しようが未来は大して変わらない。だがな、もしどちらか一方と一ノ瀬聖羅が結婚すると厄介なことになるんだ。」