魔術師の瞳
白いブラウスに赤いスカート。胸元に赤いリボンを結べば、上品ながらも簡素な格好になった。
『君は赤が似合うな。』
そう言われた気がして振り向くが、部屋には彼女一人。
静寂が広がり、LEDの人工的な光が調度品を照らすだけ。
広く、明るい部屋に自分一人だけ。それが孤独で寂しくて、ぽっかりと空いた記憶の穴から入る冷たい風がすべての記憶を遠くへ運んでしまいそうだった。
不意に思い知らされる孤独を消すために部屋から出る。
丁度到着したエレベーターに乗り込もうとすると、蒼蓮と冬夜がいた。
「丁度良かった。夕食に誘おうとしていたんだ。」
穏やかな笑顔の冬夜にあくびをしている蒼蓮。
孤独が和らいだ気がして笑顔が溢れる。
『君はよく笑うな。素敵な笑顔だ。』
今日は随分と声が聴こえる。嬉しいのか悲しいのか、声の存在が現実なのかも分からないのに痛みだけは現実として苦しめるのだ。
二人の背を追って歩く。間を歩くように言われたが丁重にお断りした。