魔術師の瞳
「止めないで!美花の敵をとるの!」
「聖羅!冷静になれ!」
平手打ちの音が響いた。声からして聖羅と刀李だろう。
そう予想して目を開けば、その通り。寮の目の前の広場で二人が言い争っているじゃないか。
これは中々に面白そうだ。目を凝らして観察すると、頬を押さえる刀李と怒りを周囲にぶつける聖羅。
二人ともまだ制服で、随分と長い時間言い争いをしているのかもしれない。
主があれでは刀李も大変だろうな、と思ったあざみは暫くの間観察することに決めた。
「刀李は美花のあの姿を見てもなんとも思わなかったの!?」
「見たからこそお前を止めてるんだよ!気付け!」
「私が遷宮に負けると言いたいの!?」
「違う!しっかり作戦をたてろってことだ!」
黙りこんだ聖羅の前で刀李は茶色い髪を掻き上げながらイライラとした様子だ。
「もういいわ。刀李。・・・私の前から消えて。」
「は?」
「消えてって言ってるのよ!」
怒鳴る聖羅の憤怒はここまで伝わってきそうだ。
エントランスに入っていった聖羅の背を呆然と見ていた刀李だが、暫くして寮とは反対方向に歩き始めた。