魔術師の瞳
背で刀李をマネキンから庇うようにすると、不満気な声。
立場を分かっていないのか何なのか知らないが、相手をしてやる暇はない。
迫り来るマネキンは数十体。あざみの登場で後ろに下がっているので正確な数はわからないが先の戦いよりも減ったであることは分かる。
だが、強くなっている。それにあの大型マネキンが見当たらないのだ。
「私から離れたら死ぬと思ってください。」
冷ややかな声色でそう言えば刀李にも伝わったのか黙りこんだ。
正直負傷しているのは想定外で、足手まといになるとは思っていなかったが仕方がない。
助けると決めたのは他でもない彼女自身なのだ。
小刀を鞘に仕舞って口で鞘を噛んで持つ。品はないが仕方がない。
「Sowel.」
宙にルーン文字を描き、光を放った文字が宙に出現する。Solと同じ魔術だが威力と魔力消費が桁違いの上位互換だ。
弓を構えるような態勢をとると、文字は炎となり彼女の上半身ほどありそうな弓を形作る。
引き絞りマネキンの頭を狙う。
短い息を吐いて、放った。
渦を巻きながら火の粉を散らし直進する矢。マネキンの頭を貫通し、爆ぜた。
火柱が上がり、数十体のマネキンを巻き込み燃える。
燃え盛るマネキンが近寄ってくるが、辿り着く前に灰になって消えた。
これで残りのマネキンは数体。再び小刀を手に持ったあざみは深く息を吸い、
構える。