魔術師の瞳
影の魔物が駆け出した。
ルーン文字が混ざり合い形をなす。
『誓う。我が剣、そなたの盾。我が身、そなたの剣。荒野の座より馳せる、我が名はウールヴヘジン。』
二足で立つ狼、いや狼の毛皮を被った人間だ。屈強な肉体に毛皮を纏わせ、手に素朴な剣を持つ男。
狼の遠吠えが獣の咆哮とぶつかり、激しい戦いが始まった。
魔物は剣で切り裂かれても霧散し、狼は魔物の一撃をものともせずに果敢に挑む。
互角の戦い。獣の臭いが辺りに広がる。
あざみが人差し指を魔物に向けた。その指先に光が集い、しっかりと狙いを定めて唇を開く。
「フィンの一撃。」
眩い光が直進し、魔物の赤い目を貫いた。霧散せず悲痛の咆哮をあげる魔物、その隙を逃さず狼は残った片目に剣を突き刺した。
人間の叫びにも、獣の咆哮にも聴こえる声を残して魔物は消える。
結界が破れ、月の光が辺りを照らす。
「盟約はまた座に返す。・・・ありがとう、ウールヴヘジン。」
頷いた狼は光の粉となり消え、地面に落ちていた血液も消えた。
辺りには静けさと穏やかな風が戻り、これで終わった。二人がそう思った瞬間だ。