魔術師の瞳
「なんとお礼をしたら良いのか・・・ありがとうございます!」
勢いよく頭を下げた刀李に意外そうな顔した蒼蓮は、見た目に合わない豪快な笑い声と共にその背を叩いた。
「そんなに畏まるなよ。」
顔を上げた刀李の肩に腕を回し、けたけた笑う。
まるで普通の男子高校生のようだ。
「それにお前が一番感謝すべきはあざみだろ。」
満更でもない笑顔のあざみを見た刀李は、一瞬下唇を噛んだが意を決したらしく口を開く。
「遷宮、昼はすまなかった。」
目を大きく開いたあざみだが、顔を綻ばせて刀李の手を取る。
「気にしていませんよ。私達、これでお友だちになれましたか?」
心底驚いたような顔をした後に顔を真っ赤にした刀李は勢いよく頷き、冬夜と蒼蓮が「しまった」と言わんばかりの表情になる。
「せ、遷宮。手を、離してほしい」
真っ赤な顔、消え入りそうな声でそう言った刀李を見て慌てて手を離す。
冬夜と蒼蓮がそれぞれ刀李の右肩左肩と腕を組み、逃げられない刀李。
冷や汗が背を伝う。
「あざみさん、おやすみ。」
「良い夢見ろよ。」
爽やかな笑顔を浮かべる二人にそう言われては何も出来ない。
捨てられた子犬のような瞳で見つめてくる刀李に心のなかで謝ってあざみは寮へ帰った。