魔術師の瞳
魔術師は各々自身の魔術や魔力を最大限に引き出す物を持っており、それは礼装と呼ばれ戦いの場においてもっとも不可欠な物となる。
彼女の場合だと黒手袋か紫水晶が礼装となり、桐岡は恐らく髪に結ばれた赤いリボンが礼装だ。
戦闘魔術試験は当然ながら戦場となるフィールドを必要とする。小さくて25m四方、大きいもので100m四方、複数人数になるとそれこそが数ヘクタールの広大な森ひとつ丸々をフィールドとすることもある。今回は中距離戦闘魔術試験なのでフィールドは50m四方の正方形。グラウンドの丁度中央が教師の隔離魔術により外界と遮断され、彼女と桐岡のみ入れる空間となった。
友人たちの声援と熱視線を背に受けながらフィールドに入ると、桐岡が肩慣らしと言わんばかりに魔法陣を展開している。
魔術師たるもの威風堂々たれ。それが彼女の属する遷宮家の家訓。父の教え通り、背筋を正して深い礼をする。
「それでは、一学年女子中距離戦闘魔術試験決勝を開始します。」
教師はそう言うと、高く振り上げられていた赤い旗を降り下ろした。