魔術師の瞳
華風、という家に聞き覚えがないと言えば嘘になる。しかし、その存在を信じられるかと問われると答えは否だ。
華風は明治まで存在していた名家で、その最盛期は式家を凌いだとも詠われる。しかし跡継ぎに男の子の出来にくい家計ゆえにお家断絶となったはずだ。だから元を辿れば華風の人間はいれど、現在華風を名乗れる家はいないことになっていた。
教師も困惑が滲む顔だが、とりあえず自己紹介を促した。
「京極家次期頭主、京極冬夜です。イギリスの白壁城に留学していて、つい先日帰国したばかりなのでお手柔らかにお願いします。」
甘い声にあざみを除く教室中の女生徒がうっとりとしていたが、彼があざみに結婚を申し込んだという事件は瞬く間に校内へと広がっていたので色目を使うような者はいなかった。
「華風エイルです。…華風家はお家断絶したと言われていましたが、それは誤りで私は直系の跡取りとして産まれました。よろしく。」
なんだか尊大な態度だが、それに見合う風貌である。
黒髪に青い目、あざみと同じように端整な美貌とすらりとしたスタイル。美しいと呼ぶに相応しい美少女である。
入学できているということは華風エイルの話は嘘偽りの類いではなく真実なのだろう。教師もパッとしない顔だが空いている席に二人をあてがいSHRの後にそそくさと去っていった。