魔術師の瞳
あざみの両隣にいる式家と京極家の跡取り達を一瞥した後に満面の笑みを浮かべる雪の王。
「本来ならお主ら王に使えても良いのだが…男はむさ苦しくて好かん。どうだ小娘?我と契約せよ!損はさせぬし、我はお主をいたく気に入った。良いだろう?」
自信満々、随分と上からな物の頼み方だが王と名がつく召喚精霊に逆らえるほどにあざみの心は荒んではいなかった。ただ、グラウンドの中央で雪姫といる華風が怖いというか、余計な恨みを買いたくない。
悩むそぶり見せると冬夜と蒼蓮が笑った。
「む…悩みおるか小娘。しかし他者への義理立ての心は称賛に値する。益々気に入ったぞ。我はそなたに仕えることを希望するぞ。」
「雪の王、フリールオール様…わかりました。誓いをここに…」
天真爛漫とも言える傍若無人なその振る舞いには華風あざみも教員もその場にいる全員が驚いていたが、あざみを王が好ましく思うのと同じくあざみも王のことを好ましく思っていた。
あざみの了承を得たことで雪の王は地に片膝をつき、その手をとっても言葉を紡ぐ。
「雪の王フリールオール、我が身我が心捧げそなたの誓いを受けよう。───────例えその瞳深淵に墜ちようと、我が忠誠に変わりはない。不変の愛と敬意を持ち、この身消え行くそのときまで、我が力はそなたのためだけだ…」
ふっ、と表情筋を緩ませるように柔らかく笑った雪の王はあざみの手の甲にキスをし、その瞬間眩い光と凍えるような冷たい風が辺りに吹き荒れた。