わたしは2度、あなたに恋をした。
季節は10月、あたしの5歳の誕生日の前日。


『あおいくん、ほんとうにいっちゃうの?』

『…うん。ぱぱのおしごとがおわっちゃったから、おうちにかえらなきゃいけない』

『…うぅ……やだよぉ……あおいくん、いっちゃやだよぉ……グスッ…』

『…かのちゃん、なかないで』

『やだぁ……ばいばい、したくないよぉ…グスッ…グスッ……』


あたしはあの時たくさんの涙を流してた。


『かの、あしたおたんじょうびなんだよ……?あおいくんと…おいわい、したいよぉ……グスッ』


あたしはあの頃自分のことを"かの"と呼んでいた。


『……ねぇかのちゃん、しってる?』

『なに…がぁ…グスッ?』

『コスモスのおはなってね、かんじで秋の桜ってかくんだよ』

『コスモス……?秋の、桜?』

『うん!だからね、これかのちゃんにおたんじょうびプレゼントだよ!』

< 11 / 28 >

この作品をシェア

pagetop