眩暈
私たちの交わした最初の言葉はなんだったのか、もう忘れた。サッカーの話に興じている彼らの隣に、私たちはたまたまいただけだった。握手を交わして自己紹介した時、ドイツ、それからフランス、ブラジル、そして最後にセルビアの名前を聞いたと思う。そのセルビア人は、驚くほど真っ直ぐに私の目を見た。深い、栗色の瞳。“セルビア”という名前を聞いた時、私はセルビアがどこに位置する国なのか、一瞬混乱した。彼にとってみたらそれはよくあることだったのか、すぐに“ユーゴスラヴィア”と付け加えた。その国は、もう、ない。地図から消えてしまったその名前を聞いて、私はセルビアという国を認識した。彼は微笑んでいた。目の色と同じ、栗色の髪の毛。年齢は私よりも少し年上のようだったけれど、髭に混じる白髪が彼を年上に見せていた。彼らはさっきまで話していたドイツ語での会話を中断し、ドイツ語を話せない私とカナダ人の女の子のために英語で話し始めた。セルビア人が話す英語のアクセントはどこかイタリア人のアクセントを思い出させた。私がそれを伝えると、彼は“Nein!”とドイツ語で否定したけれど。
彼らはこの近所に住んでいて、毎週金曜の夜に皆でサッカーをして、その後いつもここで飲んでいるのだと私たちに説明した。私は数日前にベルリンへやって来て、今は家を探しているところだと伝えた。その瞬間、皆がにやりと笑って、セルビア人を指差した。そして彼自身もにやりと笑いながら、親指で自分を指した。
「もう部屋探しは終わりだね。俺のうちにおいでよ!」
誰かが口笛を吹いた。なんて夜なの!カナダ人の女の子が言った。私は酔っ払っていたのか、すぐに入居を決めてしまっていた。ユーゴスラヴィアという、もはや存在しない国に私は惹かれた。そして私の同居人になるだろうセルビア人に。友達に囲まれて、幸福そうに笑っている男。巻きタバコを吸っていた、あの男。まだ彼の家さえも見ていなかったし、彼が一体どういう人かもわからなかったというのに、私の好奇心は私に進めと言った。
「もう一度、名前を聞いていいかしら?」
私は、尋ねた。
「ルカ。君の名前は?」
私たちは握手を交わしながら、会話を続ける。
「ヨーコよ」
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