眩暈
家の中に入り、右側を見ると開けっ放しの扉から半裸の男性がうつぶせで寝ていた。ルカだった。そして左側を見るとキッチン、それからあまり広くはないそのスペースに古いテーブルと椅子が置かれていた。ドイツ人と思われる長い黒髪の女は、はだけた胸を隠そうともせず、煙草に火を点けて、私をじっと見ていた。私がベッドで寝ているルカを見たことに気がついた筈だったが、彼女は扉を閉めようともしなかった。二人は明らかにセックスした後で、彼女はそれを私に印象付けようとしている気がした。まるで私を威嚇するように。
「よく眠っているから、起こさないでね」
彼女が唯一私に言った言葉は、それだけだった。彼女は一度も私に笑いかけなかった。私は彼女が嫌いだと思った。ルカったら、あんなにいい人そうに見えたのに、女の趣味は最悪ね。私は心の中で毒づいた。私の部屋を尋ねると、あっちよ、と無愛想に答えて、女は携帯をいじり始めた。
部屋に入ると、ちょこちょこと犬が私の後を付いてきた。ビーグルのような犬だ。とてもおとなしくて、私を不思議そうに見ていた。私は舌打ちした。彼、犬がいるなんてことも一言も言ってなかったわ。私は犬が嫌いだった。と言うよりも、今までの人生で犬に触れる機会がなかったので、どういう風に犬と接していいのかわからなかった。犬は私を見ていたけれど、私は犬を無視して、荷解きを開始した。犬はいつの間にかどこかに消えていた。部屋はとても広く、私はすぐにそこが気に入った。でもあの女といい、犬といい、この家にしたことは間違いだったかしら。そんなことを考えていた。
荷解きを終えると、お昼を回っていた。気を取り直すために大好きな音楽を聴いていたので、私の機嫌はいつの間にか直っていた。窓から見えるプラタナスの並木道と青い空も私の機嫌を直すのに有効だった。きれいなところ。私はそう思った。玄関の扉が開く音がした。あの女が出て行ったのかしら、という期待を持ってキッチンへと向かうと、ルカがコーヒーを飲みながら、煙草を吸っていた。テーブルの上にはPUEBROと書かれた煙草の葉っぱの入った紙袋が置かれている。彼は一瞬驚いた顔で私を見た。私はと言うと、彼が上半身裸のままでそこに座っていたので、目のやり場に困った。彼はすぐに思い出したように笑って、握手を求めて来た。
「調子はどう?えっと・・・」
「よく眠っているから、起こさないでね」
彼女が唯一私に言った言葉は、それだけだった。彼女は一度も私に笑いかけなかった。私は彼女が嫌いだと思った。ルカったら、あんなにいい人そうに見えたのに、女の趣味は最悪ね。私は心の中で毒づいた。私の部屋を尋ねると、あっちよ、と無愛想に答えて、女は携帯をいじり始めた。
部屋に入ると、ちょこちょこと犬が私の後を付いてきた。ビーグルのような犬だ。とてもおとなしくて、私を不思議そうに見ていた。私は舌打ちした。彼、犬がいるなんてことも一言も言ってなかったわ。私は犬が嫌いだった。と言うよりも、今までの人生で犬に触れる機会がなかったので、どういう風に犬と接していいのかわからなかった。犬は私を見ていたけれど、私は犬を無視して、荷解きを開始した。犬はいつの間にかどこかに消えていた。部屋はとても広く、私はすぐにそこが気に入った。でもあの女といい、犬といい、この家にしたことは間違いだったかしら。そんなことを考えていた。
荷解きを終えると、お昼を回っていた。気を取り直すために大好きな音楽を聴いていたので、私の機嫌はいつの間にか直っていた。窓から見えるプラタナスの並木道と青い空も私の機嫌を直すのに有効だった。きれいなところ。私はそう思った。玄関の扉が開く音がした。あの女が出て行ったのかしら、という期待を持ってキッチンへと向かうと、ルカがコーヒーを飲みながら、煙草を吸っていた。テーブルの上にはPUEBROと書かれた煙草の葉っぱの入った紙袋が置かれている。彼は一瞬驚いた顔で私を見た。私はと言うと、彼が上半身裸のままでそこに座っていたので、目のやり場に困った。彼はすぐに思い出したように笑って、握手を求めて来た。
「調子はどう?えっと・・・」