強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「まさか。あれだけ正直に、本人の前で好きじゃないって言ったんだもん。プライドの高いあの人は、きっと怒ってるし……誰より私が、無理だから」
テロリストに襲われる以前に、生理的にムリでキスもしたくない男と結婚なんてできない。
否定すると、悠は一瞬、口の端を上げた。ような、気がした。
「そっか。まあ、いつかは誰かと結婚するかもだし、料理はできた方が役に立つだろうね」
いつかは誰かと、ね……。
ちらと悠を見ると、彼はあっという間に空になったお皿を下げて、流しに持っていく。
あーあ……この前意地を張ってしまったから、彼女がいるかどうか聞けなくなってしまったし……私、何やってるんだろう。
悠はSPだから傍にいるだけで、他に何の感情もないはず。
なのに、どんどんと期待を膨らませてしまっている自分がいる。
悠とだったら、自分が自分でいられる。
きっと、いつも笑顔でいられるのに……なんて。