強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
どんな人と一緒にいても、いつかは愛情が冷める時がくるだろうし、ケンカだっていっぱいするだろう。
大人になってもこんな妄想をするなんて、どうかしている。
「もうやめよう……」
警護中にマルタイがこんなこと考えているなんて知ったら、SPは仕事しにくいだろうし。
「何をやめるの?」
悠がクリーニングに出す衣類をまとめながら振り返る。
「なんでもない!」
私は無理に笑って、顔の前で手を振って見せた。
「って、ん……? ちょっと待って、事件の犯人のこととか、お母さんのネックレスのこととか、まだ何も聞いてないんだけど」
リンゴの辺りから話が逸れて、重要なことを聞いていない気が。
「色々と推察は出てるけど、全部話すのは裏付けが取れてからって、キャリアに言われてるから」
「キャリア?」
「公安の篠田」
ああ、あの狐目の警視さんね。塩顔イケメンの。
そうか、あの人が操作の指揮を執ってるってわけね。
SPたちとは仲が良さそうじゃなかったし、色々と教えてもらうには時間がかかりそう……。
胸のモヤモヤを吐き出すように深くため息をつくと、悠に苦笑された。