強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
昼を過ぎ、何もすることがなくうとうととし始めたころ、備え付けの電話が鳴った。
「はい」
電話に出るのは、私ではなく悠の役目。
なんだかこうしていると、お姫様になった気分。
自分では仕事も何もしないで、全部他人にやってもらっている。
ベッドに転がって雑誌を読んで、DVDを見て、マニキュアを塗って……そのうち本当にダメ人間になりそう。
「わかりました」
受話器を置いた悠は、はあとため息をつく。
「どうしたの?」
客室にかかってくるということは、フロントからだよね。どんな用件だったんだろう。
「篠田警視がフロントに来てるんだって」
「ああ、塩顔イケメンの」
「は?」
ただ篠田さんの顔をほめただけなのに、悠は眉をひそめる。
その顔は、一度だけ見た野性の狼を思わせた。
あれ? 何か怒ってる?
「イケメンって、霧子はああいうのが好み? だからあの婚約者が嫌なの?」
いや、たしかに篠田さんは塩系で、篤志さんは醤油系だけど……って、どうしてそんな話に。