強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「ごめんなさい。気分が悪くなって、風に当たりたくなって……」
「彼女はここで、不審者に襲われたんです」
大西さんは片手でスーツの胸ポケットから出した警察手帳を篤志さんに見せ、簡単な自己紹介をした。
「不審者?」
じろりと大西さんを見て、篤志さんは首をかしげる。
「ええ。詳しい話は中でしましょう。どうか、気分を落ち着けてください。彼女は今さっき、怖い思いをしたんです。あなたがそんな鬼のような顔をしていたら、いつまでも安心できない」
「そんなこと、お前に言われる筋合いはない。行くぞ霧子」
篤志さんが私の空いている方の手をつかみ、グイッと引く。
そちらに体が傾くと、大西さんに繋がれていた腕が痛んだ。
どうしたんだろう。大西さんからしたら私は初対面でいきなり変なことを言いだした変な女だ。さっさと離してしまえばいいのに……。