強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「何をしている。離せ」
篤志さんが大西さんをにらむ。
「でも……」
大西さんは篤志さんではなく、私をじっと見つめた。
まるで、私の本心を見透かそうとしているかのように。
「離せと言っているんだ! 彼女は俺の婚約者だ。SPごときが気安く手を触れるな」
また大声を出され、体が震える。
片手から、ゆっくりと大西さんの手が離れていった。
「あのっ……」
篤志さんに引きずられるように歩きながら、必死で後ろを振り向いた。
すると、大西さんの後ろから誰かが駆け寄ってくる。同じようなスーツを着た……たぶん、別のSPだろう。
彼らは何かを話している。さっきの不審者のことだろうか。
その間に、大西さんはちらちらとこちらを見ていた。
何度か目があったけど、彼が私の方に駆け寄ってくることは、なかった。