強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「でも、一緒に住んでいるのは妹さんでも、他のところに彼女がいる可能性はありますよね」
「たしかに。でも、それもないですよ」
「どうしてそう言いきれるんですか?」
後部座席から身を乗り出すと、高浜さんは穏やかな顔で言った。
「彼は、ずっと妹さんを守ってきたんです。両親と別れてからも、ずっと」
ずっと……。きっと、桜さんが産まれたときから今まで、ずっとってことだよね。
彼らの絆は、私が想像もつかないほど、深いものだろう。
「班の飲み会のとき、何がきっかけだったか、結婚をいつしたいか、みたいな話になりましてね。そのとき大西がぽろっと言ったんです」
「なんて?」
「自分は、妹が誰かの元に嫁いで幸せになるのを見届けるまで、恋愛もしないと」
ぎゅっと胸がしめつけられたような気がした。
何て素敵なお兄ちゃんなんだろうと思うと同時、少し切なくもある。
桜さんを送りだすまで、恋愛すらしないなんて……。