強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
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──ピロンポピロリリン
スマホのマヌケなアラームで目を覚ます。
「仕事か……」
むっくりと起き上がり、洗面所に向かう。
鏡の中に写るのは、タレ目でぽってりしすぎた唇の、すっぴんの自分だった。
一昨日の夜の夢を見てしまったみたい。胸がもやもやしてる。
今の私を見ても、大西さんは私だって気づかないだろうなあ……。
あのあと結局、大西さんと顔を合わせる機会はなかった。
別の警察官から、私を襲った不審者をSPたちが取り押さえたという報告を受けただけで、その後の捜査の進捗は教えてもらってない。
きっと、ただの変質者か物取りだろうと篤志さんは言っていた。
顔を洗い、朝食用に買っておいた菓子パンをかじる。
総理公邸なら、もっとちゃんとした朝食が用意されるのだろう。
だけど私は、公邸には住まず、職場の近くのマンションを借りている。
気楽な一人暮らしは、人間をダメにするわ……。
あくびをしながら、毛玉だらけのスウェットを脱ぎ捨てる。
さて、気分を切り替えて、お仕事に行きましょうか。