強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「それは、いずれわかると思う」
な、なにそれ! 余計に気になるじゃないの~!
なんだかモヤモヤとしたまま、篤志さんとの食事に向かうことになってしまった。
その途中、ふと桜さんが言っていたことを思い出す。
『霧子さんは、ラプンツェルなんだって』
たしかに、ちょっと似ているかもしれない。
外の世界にあこがれを抱きながら、自分では何もできなくて、王子様の登場を待ち続けている。
心のどこかで、誰かが無理やり、暗い塔から連れ出してくれるのを、夢見ている……。
やだやだ、バカみたい。待っているくらいなら、自分でなんとかするべきでしょう。
とにかく、篤志さんに私の気持ちをわかってもらわなくちゃ。
こんな結婚に意味なんてない。きっと、篤志さんだって幸せになれない。
父に迷惑をかけるのは、とても心苦しいけれど……父のために不幸になるのは、母ひとりでじゅうぶん。
恩はあるけれど、私は私の幸せのために、頑張ることを決めた。
お母さん、どうか見守っていてね。
服の上から、母の形見のネックレスを握った。
そこから力が湧いてくるような、同時に気持ちが落ち着くような、不思議な感じがした。