強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
ラプンツェル
篤志さんが指定した料亭に着いたのは、日が暮れてすぐのことだった。
「ああ、ここ警護で何度か来たことあるわ」
悠が提灯の下の格子戸を開けながら言う。
門から玄関が離れているお店なんて、初めて来た。
きっと、政治家とか偉そうにしている人たちが贔屓にするような店なんだろう。
着物を着た仲居さんに通された部屋の前の廊下から、ベタな日本庭園が見えた。
大きな日本家屋のような建物に和室が並んでいて、客同士の姿はおろか、声も聞こえないようになっている。
「失礼します。お連れ様がお着きです」
そうして開けられたある個室の障子の中に、篤志さんは一人で座っていた。
「お待たせしました」
「いや、時間通りだ……が」
大きな座卓の前に座った私の背後に立つ悠の姿を見て、篤志さんは顔をしかめた。
ちなみに高浜さんは、部屋の前で仁王立ち。その大きな影が、障子に写っている。
「僕と君で、話がしたいと言っただろう」
それはちゃんと聞いていましたけど。